「江里乃って、どんな人が好きなの?」

「えー? なに、急に。芸能人でってこと?」

「なんでもいいよ。芸能人でも、性格でも」


いっそ、ふたりがちゃんとくっついちゃえば、諦めもつくのかな。
私が好きでも、なんの見込みもないんだし……そのほうがウソをつき続けるよりも楽かもしれない。


「私のことを、好きでいてくれる人、かなー……」


そんな人、いっぱいいるよ。
「そっかー」なんて返事をしながら、みんなに注目され、好意を抱かれている江里乃に嫉妬した。

瀬戸山だって、江里乃のことが好き。
つまり、私が今、本当のことを言えば……あっさりとふたりは結ばれるかもしれない。

江里乃が悪いわけではない。そんなことわかってる。わかってるけど……モヤモヤした気持ちが溢れて止められない。

それなりに女の子から告白されているにも関わらず、誰とも付き合わなかった瀬戸山が、高校で初めて好きになった人。それが……江里乃でなければ……よかったのに。



「そういえば、希美、今日も勉強するの?」

「あ、うん。テストまでは……毎日、なのかも?」


今日で3日目。
昨日の勉強では、今まで意味のわからなかった公式がやっと理解できた。瀬戸山に教えてもらう前だったら、あきらめているところだ。

瀬戸山は英単語の暗記を始めて、私が教えることはなさそうなんだけど、今日も、多分、行くんだろうな。

……この、嬉しいけど、複雑な気持ちを……どう処理したらいいんだろう。