ピピピッとアラームが鳴って、ふたりで顔を上げる。


「あーもう、7時半か」

「じゃあ、そろそろ帰るね」


思ったよりも集中して勉強していたせいか、あっという間に時間がたっている。
ひとりで勉強するよりも、ずっと身になっているかもしれない。

鞄の中に教科書を詰め込むと、瀬戸山が「バス停まで送る」と一緒に立ち上がった。


「いや、いいよ、バス乗るだけだし」

「俺が送るって言ってるんだから、それでいいんだよ」


でも、と言いかけたけれど、それを遮るようにさっさと部屋を出て階段を降りていく瀬戸山。多分、断ってもムリだろうな、と諦めて私も玄関に向かった。


「ちゃんと鍵かけとけよ。チャイム鳴っても無視しろよ」

「はーい。のぞみさん、バイバイ」

「ありがとう、またね。おじゃましました」


帰るのに気づいた美久ちゃんとおばあさんが玄関に来てくれて見送ってくれた。
“またいつでも来てね”と言ってくれるおばあさんに、嬉しくて“ぜひ”と答えてしまったけれど、どう考えても“彼女”だと思っているんだろうなあ。

……いいのかな。誤解されたままで。


「あの、美久ちゃんとおばあさんの誤解……」

「まーいいんじゃね? 明日も来るだろ? 毎日来たらなに言っても信じねえし」


バス停でベンチに座りバスを待ちながら告げると、さらっとした返事がかえってきて「そっかー」と言って、ふと動きが止まる。

……明日? え? 明日も? っていうか毎日?