「もういいから、美久、勉強の邪魔だろー」
「えーいいじゃん少しくらい! だって気になるんだもん。……しかもお兄ちゃんの彼女って初めてだし」
「少し息抜きしようよ。ほら、適度に休憩しなきゃ集中力落ちるって言うし。休憩してまた勉強しよう。ちょっとだけ、お話しよう」
言い争いになるふたりの間に入って「ね?」と言うと美久ちゃんはぱあっと花が咲いたような笑顔になり、瀬戸山は呆れたようにため息を落とした。
「希美さんとお兄ちゃんは、どっちから告白したの!?」
「え……? えーっと」
しょっぱなから予想だにしなかった質問を投げかけられて、ちらりと瀬戸山を見る。
「黒田が責任取れよー」
「ちょ、なんで!」
「お前が休憩しようって言ったから。こうなるのわかってたのに」
……ひどい!
ひとりであんこを食べながら知らん顔をするなんて。
そりゃ、私が休憩しようって言ったけど……この質問にはどうしていいのかわかんないんですけど。
こんなキラキラした視線で見つめられて、“付き合ってない”と言っていいものか。でも付き合ってるわけじゃないし……。
「美久ちゃんは、えーっと、彼氏いるんだっけ?」
「うん、先週告白されて。でも、あれから全然話せなくて……」
あ、よかった。
質問に答えずに次の話題に移れてほっとしつつ、今どきの小学生ってすごいなあと改めて実感する。小学生で付き合うって、今は普通なのかな。
私のときは中学生でも付き合うなんて珍しかったのに。