「おー、黒田!」
ビクーっと飛び上がりたいほど驚いて、慌ててノートをポケットに忍ばせた。
いや、私が受け取っていること知っているから見られてもいいんだけど。うまくごまかせる自信がない。
「いいところにいた!」
「……なに?」
私を探していたのかバタバタと近づいてくる。
なんとなく身構えてやってくるのを待っていると、がしっと肩を掴まれた。
「お前!」
あまりの剣幕に、冷や汗が体中から吹き出す。
なに? もしかしてウソがばれたとか? 怒ってる? もしかして、バレた? なんで?
——どうしよう……!
「英語得意だよな!?」
「……ごめんなさ……! え?」
反射的に謝ってみたけれど、聞こえてきた言葉に、ん? と首を捻る。
「なに謝ってんだお前。なにしたんだよ、俺に」
「え、あ、いや。なんとなく。っていうか、英語? ってなにが」
「そう、お前英語得意だったよな!」
英語は確かに得意だけれど……そんな話したっけ?
「う、ん……」
「俺に勉強教えてくれ!」
……なんで?
ぽかんとする私をよそに、瀬戸山が焦った様子で「やばいんだよ、ほんと!」と目の前で手を合わせて頭を下げる。
「今度のテストで欠点取ったら補修らしんだよ。授業終わったあととかにそんなもん受けてたら家に帰れねえし」
そういえば、妹の面倒を見ているんだっけ。
必死な表情を見ると、断るなんてできるはずない。