どうしようか悩んでいたけれど、そう決めてしまうとすっきりする。
瀬戸山には申し訳ないけれど、仕方ない。だって苦手だもん。

こういうことも、瀬戸山のことも。


「セト、元気ねーじゃん!」


その声に思わずびくりと体が跳ねた。
……セト。それが、瀬戸山の愛称であることは、私でも知っている。

ああ、今日は本当に、なんでこう出会うはずのない人とばかりであってしまうのか。

理系コースは大抵文系よりも1時間くらい授業が長いのに……。

声のした方を見ると、名前を呼ばれた瀬戸山と、その友達だろう、男の子がふたり。


確かに、やっぱり、かっこいい。
周りにいる女の子たちは、先輩後輩問わず、みんなちらちらと瀬戸山を見ている。


「どーしたの?」

「セトが昼から急に元気ねーんだよ。悪いもんでも食ったんじゃねえの?」

「あーもう! うっせえなあお前らは! ほっとけ」


……昼から元気が、ない?
もしかして……手紙が関係している、とか?

友達の雰囲気を見ていると、手紙のことは知らないっぽい。
しかも、よくわからないけど、瀬戸山は落ち込んでいるらしい。

ってことは、やっぱりあの、手紙のせい、だよね……。返事を期待していたとか? 待っていたとか?

近づいてくる瀬戸山たちに、心臓がどくどくと音を立てて伸縮する。
私がいるって気づかれたら……。

ちらりと瀬戸山の方をみると、ぱちんと彼と視線がぶつかって、コンマ1秒で逸らした。

——まずい。
まずい、まずい、まずい。


あれが本当のラブレターだったなら……相手は私のことを知っているはずで、私が返事をしないことに不満を抱いているわけで。

こんな場所で話しかけられたりしたら、いや、それより手紙のことを発言されたら、終了だ。