ほんのりと温かい缶を受け取り「ありがとう。あ、お金……」と答えながらラベルを確認する。
「ぶ、っは! なん、で、おしるこなの」
「なんでもいいんだろ?」
「まさか、おしることは思わなかった。ふはは、よくあったね、これ」
予想外のチョイスに吹き出すと、瀬戸山もしたり顔をした。
店内は寒くもないのに、まさかおしるこ選ぶなんて。なんでこれ。
「ふは、は、あり、がと。缶のおしるこって、そういえば飲むの初めてかも」
クスクスと笑いながら缶を振って開ける。
一口飲めば、ぶわりと甘さが広がった。
缶のおしるこってこんな味なんだー。
「お前は、なんでもいいんだよ」
「え?」
「なんでもいいって言ったらなんでもいいんだろ? だから、文句も言わずにそれも飲むだろ。それでいいんじゃねえの? 別にウソついてるわけでもねーじゃん。自分の意見だろ、それも」
私の手元を指さして「な」と笑った。
……私を、慰めて、くれたのかな。
さっきの言葉に対して、“それでもいい”って。そう言ってくれてる、んだよね。
「まーなんでもいいばっかりじゃめんどくせーけどな。お前もちょっとは考えろっていう話だよ」
「……うん」
「お前、多分自分が思ってる以上に“自分がある”と思うけど。面倒くさいくらい」
どういう意味かよくわかんないけど、多分、肯定してくれているんだろうな。
こんなふうに、言ってもらえるなんて思ってなかった。こんなふうに言われることなんてなかった。
手元のおしるこが暖かくて幸せな気持ちになる。甘ったるいけど、おしるこもいいなあ、なんて思う。
「ありがとう」
「お金は返せよ。あと考えることはしろ」
「あはは、うん、ありがと」
いろんな気持ちを込めて感謝の言葉を伝えると、瀬戸山はとてもやさしい顔を見せてくれた。