「ムカつく」

「……なんで」

「結局お前の言うとおりじゃん。ずりーなお前、こんなふうに決めれるの」


……意味がわからないんだけど。
首を傾げると、「すげーなってこと」と私の肩にぽんっと手をおいた。

この人、人に触れるのが普通なんだろうか。
そう、気軽に頭や肩を触られると、困るんだけど……。

瀬戸山の言った意味はまだよくわからない。だけど、さっきまで私に対してイライラしていた気持ちはもうどこかに行ってしまったみたい。

口にするのもすぐだけれど、気持ちもすぐに変わるのかもしれない。



軽くご飯を食べて、しばらく他愛のない話をした。映画についてだったり、学校のことだったり。もうすぐ始まるテストのことだったり。

その後、なんとなく近くにあったゲームセンターで時間を潰そうという話になってみんなで適当に遊んだ。


「あれ?」

「ん?」


トイレに行って、さっきまでみんなでいたコインゲームのところに戻ると、そこには瀬戸山しかいない。きょろきょろと周りを見渡してみたけれど、米田くんと優子の姿が見当たらない。


「ふたりはコインゲーム飽きたとか言ってどっか行った」

「そっか」


私を……待っていてくれたのかな。
とは言え、私が戻ってきても瀬戸山はコインゲームを続けている。動く気は、ないみたいだ。

ぼーっと突っ立っていると「座れば?」と瀬戸山が隣を顎でくいっと指す。
ふたりがけの椅子に、座るってなんだか、近すぎて戸惑う。けれど、わざわざそう言ってくれたのだから断るのも失礼で、そっと腰を下ろした。