革靴に履き替えて、扉の前で江里乃がやってくるのをひとりで待つ。
どれくらいかかるんだろう。

スマホをいじりながら待っていると、タイミング悪く見覚えのある人物が私の目の前を横切った。
……学年が違うからめったに会わないのに……。

さっき思い出したから、かな。

目があったけれどお互いに気まずそうにして視線をそらし、そのまま。


前に、付き合っていた矢野センパイ。
前よりも少し、髪の毛が伸びた。ちょっと色も明るくなった気がする。
元、サッカー部の副キャプテン。

そして隣には、新しいカノジョ。

気まずいったらない。
気にしない素振りでスマホをいじり続けたけれど、落ち着かない。

こんなことなら告白されたからって付き合わなきゃよかった。……なんて考えるのは、ずるいかな。


「みんな、どーしてるんだろ」


同じ学校で付き合って、別れたのに、友達のまま仲がいい子もいる。
そんな器用なことができたらいいのに。

私にはできないや。目も合わせられないくらいだもの。
私が周りの目を気にしすぎるから、そうなっちゃうのかな。

付き合っているときも、一緒にいるところを友達に見られるのは恥ずかしくて嫌だったし。話をするのも、苦手。


……うん、やっぱり、無視しよう。


鞄の中にある瀬戸山からの手紙。これが本当であろうとウソであろうと、見なかったことにしちゃおう。

だって、あんなに人の目を集める瀬戸山と、なんてやっぱり無理。
冗談でも、返事をして噂されたり笑われたりなんかしちゃったら、最悪。