「そ、んなこと言われても……。食べたいものを我慢させるのも悪いじゃない……」
「……お前は我慢していいのかよ」
「別に、我慢って言うほどでも。みんなが食べたいものを食べれる場所があればいいな、って。それに、ほら、こういうときに、今まで知らなかったお店見つけられるかも」
「どんなけポジティブなんだよ」
ポジティブ、なのかな。よくわかんない。
ただ、こんなとき、江里乃だったら、なんて言うだろう。うまく言えるのかな。瀬戸山みたいにはっきり言えば、いいのかな。
でも、どっちでもいい、っていう気持ちも、ウソじゃないんだけど……な。
「セト、あそこは?」
先を歩いていた米田くんが振り返って、とある場所を指さした。
ハンバーガーのマークがあるけれど、チェーン店ではなく、個人でやっているようなお店。近づくと小さな看板があって、そこにはいくつかのケーキとパフェも並んでいた。
なにここ、ぴったりじゃん。
小さすぎていつもなら見落としてしまいそうなお店。いつもはファーストフードって決めて歩いていたりしたら気づかなかったんだ。
美味しそうだし、一気にお腹もすいてくる。
「おー、いいじゃん」
「んじゃ決まり。ハンバーガーも甘いものもある店」
米田くんと優子が先に入って行くと、瀬戸山がちいさな舌打ちをした。
……なんで怒ってるの!
いい店見つけられたのに!
びくびくして瀬戸山を見つめると、むっつりとした顔で私を見る。怒っている、というよりか拗ねている、というような表情。