話をしていると、音楽の趣味もだけれど、映画の趣味も似ている。


「あの映画のあのシーンかっこいいんだよなー」

「あー、わかる! 主人公のあの動きが凄いよね」

「そうなんだよ、話はクソみたいなもんなんだけど、かっこいいからそれだけでいいよな!」


タイトルを口にすれば、相手も知っていて、話が切れることはなかった。
こんなに、気を使わなくて話せるなんて。


「盛り上がってるねー」

「っわ!」


ひょこっと顔を出した優子に、私と瀬戸山が同じタイミングでびくりと体が跳ねる。
優子の隣には米田くんもいて、「いつのまに仲良くなってんだよ」と驚いた顔をしていた。


「驚かすなよ。お前らが遅いから話してただけだろ」

「5分も遅れてないし。映画までまだ時間あるし大丈夫だろー」

「んじゃ揃ったところで行こうー」


今にもスキップしだしそうな優子の後ろをついて行く。
……すごく、楽しみにしてきたんだろうなあ。いつもよりも髪型に気合が入っているのもわかるし、ずっとニコニコしている。

合コンのときもこんなかんじだったのかも。瀬戸山のことに気を取られててわからなかった。

見ているだけで私も幸せになりそう。
笑顔を見ているだけで、優子が今どのくらい楽しいかが手に取るようにわかる。

あんなふうに、気持ちを表現できたら、可愛いなあ。羨ましいなあ。


——『俺、よくわかんないんだ』


思い出したくもないことを思い出してしまって、慌てて頭を左右に振った。