「で、江里乃、今週末暇してない? 映画のチケットもらったんだけど」
「日曜日? なら無理ー、その日はお姉ちゃんと買い物行く約束してるから」
「えー」
ふたりの会話をぼんやりと眺めながら聞いていた。
優子が江里乃を誘うなんて珍しいなあ。というか、優子が誰かとふたりで出かけるとか。優子はいつも大勢で遊ぶのが好きなのに。
「じゃあ、希美は?」
「……え? 私? で、いいの?」
わざわざ江里乃だけを誘ったから、江里乃じゃないとダメなのかと思った。
日曜日、なにかあったっけ?
「なに言ってんの。いいから誘ってるんじゃないー。どうしたの」
「あ、ううん、えーっと大丈夫、だと思う」
「ほんと? んじゃ一緒に行こうー」
意外だなあと思いつつ、誘いを受けると「私と米田と、希美と瀬戸山で行くから。連絡しとくね」と耳を疑いたくなる名前が聞こえてピシリと体が固まる。
「……え?」
「もしかして、優子って瀬戸山か米田が好きなんじゃないの? 浮かれ気味なのもそのせい?」
「ちょ、な、ちが……!」
聞き返した私の声は、にやりと笑った江里乃によってなかったことになってしまった。
ああ、だからスキップしていたのか。
そういえばこの前の合コンでも仲良かったっけ。中学からの友達だとか。
——じゃなくて。
なんでそこに瀬戸山が!? あ、だから江里乃を誘ったの? じゃあなおさら私が行っちゃだめじゃん。
……江里乃が行ったとしても、それはそれで困るんだけど。
よかった、けど、よくない!