「なあに辛気臭い顔を作っているんだよ。中井、お前は仲井さんのハートをキャッチしたんだろう? じゃなきゃ彼女になるかよ。久保田なんか目じゃねえって」


キャッチしていないから、すんげぇ落ち込んでいるんだって柳。

喉元まで出掛かった反論したい気持ちをどうにか飲み込む。

言ったら余計にメンドクサイことになりそうだ。


「見たところ喧嘩じゃないんだろう? なんで自信を無くしているんだよ。"ナカナカ"コンビはお似合いだと思うぞ。そりゃまあ、久保田に比べたら知的な男とは言えないけど」


うっせぇ。一言余計だ宮本。

片頬を引きつらせ、こめかみに青筋を立てていると、「不安なのか?」と、宮本が追究してくる。

これに対しても返す言葉がない。


不安も不安だよ、この関係がいつ終わるのか、それが。


ぼくは、どんだけセンチメンタルになっているんだろう。

だんだんと女々しい自分に嫌気が差してきたんだけど。


「単純に刺激が足りないんじゃねーの? デートとかすりゃいいじゃんかよ。ほらよ、お前等って基本的に学校でしか一緒にいねーんだろ? 外に行ってみたら?」

「お、柳。名案じゃん。中井、デートしてみろって。きっと不安も吹き飛ぶぜ」


デート、ねえ。

彼女の家には行ったけど……あれはカウントされるんだろうか。


「きっかけが掴めないなら、学園祭だ。いい口実だろ?」


片目を瞑ってくる宮本が、「おれ達のライブも見に来てくれていいぜ」と笑ってくる。


宮本と柳は仲の良いクラスメイトと一緒に、学園祭のステージで出し物をする予定だ。


夏休み期間に、ちょくちょくと練習をしていたことをぼくは知っている。


ちなみにぼくも、ふたりから誘いを受けていたけど断っている。



ライブには興味が――ないしな。