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最初に付き合おうと言ったのはぼくだ。
気持ちが入れ替わったお互いを支え合う、という条件で付き合おうと言った。
仲井さんはそれを呑み、気持ちが戻るまでだと条件を付けた。ぼくは喜んでその条件を受け入れた。
ああ。誰が想像するよ。
まさか、彼女にした仲井さんに恋するなんて。
関係は両想いなのに奇妙な関係と期間限定が付いているせいで、ぼくは絶賛片思いだなんて、こんなこと予想すらできなかったんだけど。
うそだろ、仲井さんに恋するとか。冗談だと思いたい。
でも、彼女を想うと本気と書いてマジっぽい。
両想い関係の、片思いか。
いっそ告白してみようかな。玉砕する勢いで。
……だめだめ。
せめて気持ちが元通りになるまでは我慢だ。もしお断りされたらどうするんだよ。
後が気まずいじゃんか。
ぼくとしても、失恋は避けたいところだ。
彼女の隣だと、本当に自然体でいられて気が楽なんだよ。できることなら成就させたいところだけど。
仲井さんは、果たしてそれを望んでいるだろうか?
ぼくとは良いお友達でいたいんじゃ。良き相談相手、みたいな? 悩めば悩むほど、ため息が出る。
「どうしたんだよ中井。元気ないな。ははーん、さては仲井さんと喧嘩でもしたな?」
ヒトが鬱々と悩んでいると、“ナカナカ”コンビと命名した片割れの柳がいち早く反応してやって来る。
勘弁してくれ。
今のぼくはナイーブになっているから、茶々を受け流せる自信はないんだけど。
「ほっといてくれ」
机の上に肘をつくぼくは、顔を逸らして柳を拒絶する。
すると宮本もやって来て、「恋煩いか?」と肩を竦めてきた。
ぼくの機嫌の悪さを察したのか、ふたりとも茶化しは控えめだ。
それが分っているから、ぼくは無口にぶすくれるしかない。
ここで変に突っぱねてもガキくさい態度を弄られるだけだ。嫌だね、察しの良い友人を持つってのも。