その日、ぼくは仲井さんの家で夕飯をごちそうになった。
お父さんがぼくを誘ったのは、あの日のお詫びとして何かしたいと思ったからだそうな。
いや、ぼくとしてはてっきり、殴り飛ばされると思ったんだけど……結花さんのロールキャベツは美味しかったよ。
食後は仲井さんのヒマワリに詩を書いて、それを仏壇に飾った。買ったヒマワリと一緒に。
そこで手を合わせて、お母さんに挨拶した後は彼女の家族と話した。
そこで夢を叶えた結花さんの苦労話をたくさん聞いた。
幼稚園の先生になったいいものの、自分の思い描いていた夢と現実は反比例だったそうだ。
毎日が大変だと言う。
時に幼稚園の先生を辞めたくなる時もあるらしい。
夢を叶えてゴールじゃないんだな。
うっはー話を聞く限り人生ってしょっぱそう。甘くないってのは、やっぱり本当なんだな。
それでも仲井さんは夢に向かって努力するに違いない。
そういう顔をしていた。
その証拠に、お父さんにこう言っていた。
「今度お母さんの好きだったヒヤシンスを描くから、一緒に色を塗ろうよ。そしたら、少しでも絵のことが分かるでしょう? 絵を完成させるって、本当に大変なんだから」
こんなことを言っておどけられるんだ。
仲井さんはもう大丈夫、何があってもさ。気持ちが戻っても、あの痛みを乗り越えて夢を叶えると足掻くはずだ。