「中井。仲井さんと付き合い始めたって本当かよ? やっぱりあれだな、同じナカイに運命を感じたんだろう。どっちが告白したんだ?」
朝から何度目だろうか、この質問が飛ばされてきたのは。
ぼくはいい加減、クラスメイトのからかいがてらの質問攻めにうんざりしていた。
やっぱりお付き合いは早まった選択だったかもしれない。
良きお友達として振る舞う方が得策だったか?
なによりも……誰だよ。
ぼくと仲井さんが付き合い始めたことを言いふらしている奴は。
ぼくは一言も仲井さんとの関係を公言した覚えはないんだけど。仲井さんか?
何気なく背後に視線を流すと、以心伝心でもしたかのように文庫を読んでいた仲井さんと目があった。
あからさま引きつり笑いしている仲井さんの、目が笑っていないこと笑っていないこと。
おおかた、ぼく達の会話に聞き耳を立てていたのだろう。
犯人は彼女じゃないようだ。
「なあ中井」
しつこいクラスメイトに、投げやりでぼくから告白したことを教える。
嘘は言っていない。
そこに好き、という気持ちがないだけで。
「へえ。お前って仲井さんのような、おとなしい子がタイプだったんだな。意外だよ。もっと活発的な子が好きだと思っていたのに」
当たっている。
ぼくのタイプはクラスを引っぱっていくような、活発的で明るい子だ。
「ま、良かったじゃん。オーケーしてもらえて。おれは仲井さんとお似合いと思うぞ。あ、結婚しても苗字には困らないな。にんべんを付けるか、付けないかの差だぜ?」
「柳。お前もそれを言うんだな。勘弁してくれよ」
ああほら、向こうで仲井さんが机に撃沈している。
うらやましい、ぼくも撃沈して質問攻めから逃げ出したい。
これも、それも、全部あの衝突事故のせいだ。どうすればいいんだよ。