カレカノで弄られたり、自分が馬鹿をして冷やかしを浴びるのは平気だけど、夢をけなしたり、目標に対して余計なことに口出しされるのは嫌いだ。口出すことも嫌いだ。
特に本人が純粋に夢を見ている、それを壊すようなことは大嫌いだ。
茶々を入れることもしたくないし、入れられるようなこともしたくない。
それによって、もしもその人の夢が、好きなものが消えてしまったら、どう責任を取るつもりなんだろう。
他人からしてみれば、その程度のものだった、で解釈されるかもしれないけど、それでもぼくは嫌いだ。夢や好きなものに茶々を入れるのは。
夢や好きなものをばかにされても傷付かない人間なんて、たぶんいないと思う。
「ぼくが仲井さんの夢に対して、どうこう言う権利なんてないだろう?」
顔を上げた仲井さんが、まなじりを和らげた。
らしくないことを言った、と我に返るけど、その前に彼女の方が早かった。
「中井くんって、やっぱり真面目なんだね。わたし、きみを誤解していたよ。クラスでは男子達とばか騒ぎばっかりしているから。本当はとても優しいんだね」
はじめて見る、仲井さんの満面の笑顔。
それは花咲く笑顔、というより、ふんわりと柔らかな笑顔。
あたたかな微笑みは、彼女こそ優しい表情をしていると言える。
ここでいつもなら、「はいはい」と、聞き流すことができるのに、それがまったくできない。
今度は胸が熱くなった。
鼓動が早鐘のように鳴り、それを誤魔化すように視線を逸らす。
「ぼくらしくないことを言ったね。明日はきっと雨だよ、大雨だ」
「照れちゃって」
「照れてない!」
ムキになるぼくの顔を指さして、「赤いよ」と、仲井さんがおかしそうに笑う。
彼女を直視できなくなってしまった。どうなっているんだよ、くそ。
仲井さんも、いつもみたいにヒヨコの顔を作ってくれよ。そしたら調子も戻るから。