仲井さんは、ぼくのように衝動買いをしたり、DVDを揃えたり、という気持ちにまでには至っていないようだ。

DVDを借りて観ることができたら、それで十分となのだろう。


それが映画好きの仲井さんの姿なのか、それともぼく自身の気持ちの強さなのかは分からない。


少なくとも、ぼくの気持ちより、仲井さんの気持ちの方が好きなものに対する思い入れが強いんだろう。


その証拠に、仲井さんがイラストを見る度にぼくは反応をする。その数は彼女より圧倒的に多い。


好きなものに対する仲井さんの気持ちは強い。ほんとうに。


ふと、そこでぼくは思った。

仲井さんのイラストを見たことがないな、と。


彼女と校舎を出たぼくは、今日の予定を聞いた後、時間があるならファミレスに入らないか、と誘った。

訝しげな表情を浮かべる彼女に、「カレカノだからそれっぽいことをしないと」と、もっともらしい理由を述べる。

カレカノになる条件の一つに必要以上のことはしないと約束しているから、素直に仲井さんのイラストが見たいことを告げた。

でないと、首を縦には振ってくれないだろう。

あわよくば、描いているところを目にしたい。が、彼女は嫌だの一点張りだった。


べつにネタにするつもりでもなんでもないのに、


「中井くんに見せるとまた変なことになりそう」


とのこと。

衝突事故と、コンビ名を付けられた恨みは深いようだ。


それでも粘ってみると、彼女は条件を突き出してきた。


「中井くんが絵を描いてきたらいいよ。本気の絵を描いて見せて」


そうしたら見せる、と仲井さんに無茶ぶりなことを言われ、その日は終わる。

少しは仲良くできるかな、と思ったけど、二人の間にできた壁は高いようだ。


「本気の絵を描いて見せろ、なんて、無理言うなって話だよな。ぼくには絵を描くセンスはないっつーの」


仲井さんもそう思って条件を突き出してきたのだろう。自分の絵を見たければ、ぼくの絵を見せろ。ま、妥当な条件だろうけど。