「仲井さんの絵好きは、一週間でよく分かったつもりだよ。見てくれよ、このデザインやイラストの雑誌の数」


ぺったんこの通学鞄から数冊の雑誌を取り出し、仲井さんに見せる。

どれもこれもイラスト関連の雑誌だ。

本屋に運んでは手に取って買っている。

おかげで今月の小遣いが早くもピンチを迎えているという。


「これ、全部買ったの?」


驚きの表情を見せる仲井さんが雑誌を受け取り、ぱらぱらと中身をめくる。

買ったから、ぼくの手元にあるんだけど。


「元々雑誌を買って読むことが好きだったんだけど、まさか興味もなかったイラストやデザインに手を出すなんて思いもしなかったよ。仲井さんのイラスト好きには参ったね。
あ、ちなみに付箋紙をしているところが面白かった記事ね。あと勉強になりそうなところ。知らない用語も多いから、一冊読むだけで苦労するよ」


「中井くんって、意外と几帳面な性格をしているんだね。わたし、ここまでしないよ?」

「何言ってんの。仲井さんの気持ちがさせているんだろ、これ」


とんとんと雑誌を人差し指で叩くも、彼女は雑誌とぼくを見比べるばかり。そして、やっぱり自分はここまでしないと返事をした。


「わたしはイラストが好きだけど、こうやって雑誌を読んだりすることは少なかったの。どちらかと言えば絵を描く方が好きだったし。勉強になりそうなところはネットで検索したり、図書館で本を借りたり。どうしても技術的なことを知りたい時は本を買っていたけど」


つまり、これはぼく自身の行動の表れなのでは、と仲井さん。

目を点にしてしまうぼくに苦笑いを浮かべる。


「中井くんが、もしイラスト好きだったら、こんな風になっていたんだろうね」


ショックのあまりに声すら出なくなる。

うそだろ、雑誌の衝動買いも含めて仲井さんの気持ちのせいだと思っていたけど、あくまでそれはイラストに対する気持ち限定。

購買意欲や雑誌の記事に目を通す行動は、ぼく自身に原因がある、と?


いや、確かにさ。

映画雑誌を買っていた時も、好きな記事はスクラップしたり、ページに付箋紙をしたりして、いつでも読めるようにしていたけど。けども。