あしたはきっと、ゆめ日和



【あとがき】


約二年ぶりになるでしょうか、新作を執筆したのは。

はじめましての方ははじめまして。他の作品で知って下さった方はこんにちは、つゆのあめと申します。


スタ文大賞が実施された時、「あ。挑戦してみよう」と思い立ち、こうして新作を書き始めました。


しかし、テーマが【成長感×非日常×恋愛】

私がもっとも苦手としているテーマ、恋愛が入っていることで挫折しかけたことは内緒です。「恋愛ぃ?」となったことを今でも覚えています。はい。


何を書こうか、と悩みました。

スタ文のテーマと照らし合わせて考えました。


泣けるようなもの、自分のためになる、成長感とは……ずいぶん悩み、そして思いついたのが、「学生時代の頃。何に悩んでいたっけ」でした。


私が悩んでいたのは進路でした。

中学時代まで、そこまで現実的なことは教えられておらず、なんとなく将来こうなりたいな、と思っていたのですが……高校時代は一変して現実を見せつけられました。



自分がこうしたいと言っても「いや、現実見ろし」と笑われたこともありました。


いやいや、オトナはそういうの教えてくれてないじゃん?

なに、そのいきなり見せつけてくる厳しい現実!

……生意気な高校時代の私は、もうずいぶんオトナに反感を覚えていました。


オトナは身の丈にあった進路を選ばせようとしているだけなんですけどね。


でも夢を持っているコドモの私は否定される度に悔しい思いをしました。自分自身を否定されているような気すらして。

オトナは分かっちゃくれない。親も分かってくれない。なんだよ、将来不安だらけじゃん!


今回の作品はその体験を基に書いております。

仲井志穂の章は、まさしくオトナとコドモの理想と現実のギャップを書いたもの。私みたいにひねくれたり、ぶすくれたりはしていないと思いますが(笑)


彼女自身、夢を持てと言われるわりに、なんで夢を否定されるのか、意味が分からなかったと思います。







自分自身で定めたテーマは小さな“夢”と“好きなもの”。
夢を否定されて自信を失う少女と、好きなものを好きと言えなくなる少年の話でした。

誰でもあることだと思います。

私自身、好きなものを好きだと言えなくなった時期がありました。
それが趣味であれ、ヒトであれ、好きなものを否定されたら、笑われたら、自分自身を否定されるような錯覚に陥り、ずいぶん落ち込んだものです。

他人はなんて思っていないんですけどね。
言われた本人は深く傷付いたり、それ自体を嫌いになってしまうことだってあります。
でも最後にそれを好きか嫌いかを決めるのは本人次第。他人が決めることじゃないんですよね……。

中井英輔はまさに他人に好きなものを露骨に否定され、つらい経験をした結果、自分自身を否定して、好きなものを嫌いだと思い込むようになりました。

だから仲井志穂と気持ちが入れ替わることで、どこかホッとしていたと思うのです。
自分の気持ちがなくなったことに。

でも、やっぱり好きなものを完全に嫌うことはできなかった。
自分から興味を失くすならまだしも、自分はまだまだ好きなのに、それを好きと言えない……嫌いだ。それは嫌いだ。そう思い込んでは傷付いていた。

これからも彼は、ギターと向き合う度に過去を振り返っては落ち込むことでしょう。どんなに前を向こうとしても、ふとした拍子に思い出してしまうこともある。


その度に、きっと仲井志穂が支えてくれる筈です。

彼の痛みを知っているのは、彼の気持ちを持っていた彼女ですから。





最後に。


私は今、夢に向かってがんばっているひとりの少女を知っています。

その子もやはり理想と現実に悩み、どうやって夢を叶えようかと暗中模索しています。


夢を叶える。

それはとても難しいことです。
叶えても、自分の思い描いていた理想とは違い、落ち込んだり……逆に夢すら叶えられず散ってしまうこともあります。


それでもその子は、好きなものを好きだと叫びながら頑張っています。

もし夢が叶わなくとも、好きなものを好きだと言える、その少女のようにこれを読んで下さった皆様にもなって欲しいと、わたしは強く願っております。



2016.07.04 つゆのあめ
中井英輔はクラスメイトの仲井志穂とぶつかったことで、お互いの好きなものを持つ気持ちが入れ替わった。英輔は志穂のイラストに対する気持ちを、志穂は英輔の映画に対する気持ちが入れ替わり、自分らしかぬ行動を取る。それを隠すため英輔は元に戻るまでという条件で志穂と付き合い始めた。
英輔は志穂の気持ちを持つことで、彼女のイラストレーターになりたい夢の本気を知る。彼女が父親に夢を見る自分を否定されていることを知り、志穂の受けている痛みを自分が引き受け、どんなことがあろうと夢を諦めないよう背中を押した。
そんな英輔は本当に好きだったギターを忘れるために自分を偽っていた。志穂が英輔のトラウマを知り、痛みを引き受けたことで英輔は学園祭でギターを弾き、本当の自分と向き合うことができた。
辛いことがあろうと、否定されようと、自分に正直に生きる。英輔は志穂ともう一度自分の夢や好きなものと向き合う決心をするのだった。

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