それでもぼく達は、入れ替わる前のぼく達じゃない。

仲井さんはお父さんの反対に腹を立て、悔しさを口にしながらイラストを描いている。

以前の仲井さんじゃきっとアリエナイ姿だろう。


ぼくの真似を始めたのか、雑誌を買って勉強になりそうな記事には付箋紙を貼るようになった。

ネットで調べることもできるだろうに、わざわざ雑誌を買って勉強をしている。

今度コンテストに公募するようだ。

今、一生懸命に作品の構図を考えている。



ぼくはぼくでギターと向き合う時間ができた。

最初はクローゼットからギターを出すところから始まり、一年以上手入れをしてやれなかったボディを綺麗に拭いてやった。

それからギターと一緒にビニール紐で括って押し込んでいた雑誌を引きずり出し、ハサミでそれを切って雑誌に目を通すようになった。


その内、弦の張り替えがしたくなったから道具を買いに楽器屋に足を運んだ。そこで最新のギターを飽きもせず眺めたっけ。


旭達との関係だけど、気持ちが戻ってしばらくは会いに行くことも、あいつ等を思い出すことも無理だった。


それだけ自分の中で傷になっていたようで、旭達と向き合うのにやたら時間が掛かった。


それでも、ぼくはこのままじゃいけないと分かっていた。

今度は自分で会いに行くって言ったんだ。


あのメンバーは、特に旭はいつまでも待つだろう。


意を決して公民館に赴いたのは学園祭から一ヶ月半後。

すっかり秋の面影を失い、肌を刺す冷たい空気が漂う冬空の下、ぼくは高校生になってはじめて思い出の公民館に足を運んだ。


毎週火曜日に活動しているクラブは九時まで、ホールを借りて練習をしている。

大半は九時まで残らず、八時には切り上げて帰ってしまう。


それを知っていたぼくは、八時半頃にそこを訪れた。


スリッパに履きかえるところで旭を抜いた菜々達メンバーと顔を合わせた。

久しく見る面子はぼくの登場に目を零れんばかりに見開き、口々に名前を呼んできた。

菜々はともかく他の連中は中学以来の再会。どんな顔をすればいいか分からなかった。