どうせ自分には才能がない。
好きになること自体が間違いだったと思い込み、どんなに皆から謝られようが、頭を下げられようが、彼等がギターを奪ったのだと決めつけた。
そして好きなものを奪われた悔しさを隠すように映画を好きになった。
二度とギターを弾く自分を思い出さないように、夢中になろうとした。自分を偽り続けた。
違うのにな。
どんなことがあろうと、結局好き嫌いは自分が決めることなのに。
ぼくは傷付いた過去に触れたくなくて、下手くそな自分を見たくなくて、誰かに否定されることが怖くて目を逸らし続けた。
ギタリストだなんて、大それた夢は見ていなかった。
でも、皆とライブができたら、という小さな夢は見ていた。
その夢はあいつ等じゃ叶わなかった。
だけど今、違う形でステージに立っている。
楽譜のページをめくる。
『半分きたよ!』
ぶすくれたヒヨコが教えてくれる。
もう、半分か、早いな。ステージで曲を弾くって、こんなに短く感じるのか。
「あ」
コードを間違えた。
それによって自分のペースが乱れそうになるけど、メンバーは気にもせずに演奏を続けていた。
練習の成果を出しきるために。自分達が楽しむために。
おかげで調子を取り戻したぼくは、完璧じゃなくてもいいのだと自分を慰める。
それよりも、他人のせいにしてギターをやめたり、自分を偽ったり、自分自身を否定し続けていたことに問題があった。
好き嫌いを決めるのは他人じゃない、ぼくだ。
たとえ誰かに否定されようと、馬鹿にされようと、それこそ笑われようと、ぼくは――ぼくはもう自分を否定しない。