学園祭は土日の二日間に分けられて行われる。一般人も入れる公開式の行事だ。
ステージに立つのは二日目。
一日目は模擬店の店員として、クラスメイト達と忙しなく動き回った。
事前に小銭を用意していたのに、それが尽きそうになって焦ったり、思った以上に人がきてワッフルが品薄になったりと、てんてこ舞いだった。
まあ、ここまでお客さんが来てくれると嬉しいってのが本音だったりする。
だって、一生懸命に準備をしたのだから、そりゃ店が繁盛してくれた方が嬉しいじゃん?
二日目は午後からステージに立つ。
リハーサルは昨日のうちに済ませたから、午前中はフリーな時間になる。
ぼくは仲井さんと学園祭を回ることにした。
いっしょに回ろうと約束をしていたんだ。それを破るわけにもいかない。
おかげでクラスメイトから、主に柳と宮本から“ナカナカ”コンビがデートをしに行くっぽいと冷やかしを受けた……べつにいいけど、本当のことだし。
「仲井さん。たこ焼きと焼きそば、どっちがいい? そこにあるから買ってくるけど」
「え、いいよ。一緒に行くよ」
「こういう時くらい、彼氏の顔を立ててくれないかなぁ。仲井さんになにか買ってあげたいって気持ちがあるんだけど?」
仲井さんと模擬店を回った際、ちょっとした彼氏アピールをした。
期間限定だとかそんなの関係ない。
ぼくは今、仲井さんの彼氏として隣にいる。それが大事なんだから、アピールをしたって許されるはずだ。
お礼もしたかったんだ。
仲井さんのおかげで、少しずつだけどギターを弾けているから。
模擬店で昼ご飯を食べた後は、迷路やお化け屋敷をしている教室に入った。
極端に怖がりな仲井さんは学生が作ったお化け屋敷でも盛大に悲鳴を上げ、ぼくの背中にぴったり張りついてくる。
なんというぼく得……じゃない、そんなに怖いのだめなの?
なら言ってよ。さすがに誘ったぼくが罪悪感を抱くんだけど。
それが終わったら、彼女と美術部の展覧会に行った。
イラストに興味がある彼女を思って、ぼくからそこへ行こうと言ったんだ。
たくさんの水彩画には呆気にとられたよ。
仲井さんはここの美術部はちょっと、と言っていたけど、ちゃんと絵を描いているようだ。
今からでも、美術部に入れるんじゃ。仲井さんに聞くと、例のヒヨコになってこう返事した。
「わたしはわたしの道でがんばるからいいの。負けないよ」
対抗意識を持つ仲井さんが可愛くて、思わず笑ってしまった。
「なんで笑うの」
「ごめんごめん」
ぷうっと頬をふくらませる彼女の頭をぽんぽんと叩き、ばかにしているから笑ったんじゃないと肩を竦める。
微笑ましいから笑ったんだ。ほんと、仲井さんを全力で応援したくなるよ。
「がんばれ。ぼくは仲井さんを全力で応援しているから」
ころっと機嫌を直した彼女が、満面の笑みを浮かべて頷いた。うん、仲井さんならできるよ。信じている。誰よりも。