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学園祭の本番は本当にあっという間に訪れた。

今までは放課後に雑用をこなすだけで、他に何をするわけもなく、ただただ時間が過ぎていた。


けれど、柳からギターの代役を引き受けてからは目まぐるしく時間が過ぎ去った。


授業と授業の間の休み時間は楽譜に目を通し、昼休みは打ち合わせ、放課後は限られた時間で練習をする。

家に帰っても楽譜と睨めっこだ。

クローゼットに押し込んでいたギターを引っ張り出してまで練習をした。


その間、ぼくの気持ちに変化があったかと聞かれたら、何も、と答える。


ギターを弾きたい気持ちはあれど、楽しいとか、興奮するとか、逆につらいとか、悲しい気持ちはこみ上げてこない。


それはすべて、ぼくの気持ちを持つ仲井さんが受け止めている。


時折彼女がしんどそうな顔を作ることがあった。

それはぼくが、過去の面影に怯えている時だ。その度に彼女が心配になって声を掛ける。


すると、決まって仲井さんはこう返すんだ。


「わたしは中井くんの、本当の気持ちと向き合う。だから、中井くんは自分の気持ちと向き合って。真っ白な気持ちで」


その先に、きっと答えが待っているはずだと彼女は微笑んだ。

本当は自分の気持ちを持って、ギターと向き合わないといけないのだけれど、気持ちが入れ替わっているぼく達にはそれができない。


そうでなくとも臆病なぼくだから、自分の気持ちを持っていたら向き合うことなく逃げていただろう。


気持ちが入れ替わっているからこそ、ギターを弾けている節がある。


じゃあ、もしも気持ちが元に戻ったら、ぼくはギターをどうしたいんだろう?