「中井くん。痛いよ、本当に痛い。自分を否定する中井くんが、なによりつらい。きみはいつも、こんな思いを抱えていたんだね」



誰にも相談できず、いつも痛みを抱えていたんだね、と仲井さん。

ぽろぽろと涙を落としてくる彼女に「泣かないで」


「泣かれると、ぼくはどうすればいいか分からなくなる」


「違うよ。わたしじゃなくて、中井くんが泣いているんだよ。代わりを務めているだけで、わたしは泣いていない。ちっとも……泣きたいほどつらい気持ちを抱えていたのは中井くんだよ」


そうなのかな。

ぼくは泣きたかったのかな。


ギターを触らなくていいと思った時は、ホッとして涙が出たけど。


仲井さんにぼくの気持ちがあるからなのか、もうなにも分からない。自分のことなのに、これっぽっちも分からない。




分かることといえば、ひとつ。

仲井さんがぼくのために泣いてくれている、ということくらい。



「疲れちゃったよ仲井さん。ほんと、疲れた。ぼくはただギターが好きなだけだったのに、なんでこんなことになっちゃったんだろうね?」



真っ暗な学校。

三階と四階の間にある踊り場の鏡の前で、ぼくは彼女のぬくもりを感じていた。



あたたかな涙と、腕の温かさと、泣いてくれる優しさを、いつまでも感じていた。