仲井さんの中にある、ぼくの気持ちは映画を好きなようで、本当は諦め悪くべつのものを見ているに違いないんだ。

ああ、どうしたら消えてくれるんだろう。

彼女の中にある気持ちは害しかないのに。


「嫌うと決意した瞬間にぜんぶ消えてくれたらいいのにね。もう疲れちゃった」


一々思い出に傷付くことにも、自分の気持ちを誤魔化すことにも、嫌いだと思い続けることにも、ぜんぶ疲れてしまった。

こんな思いをするなら、いっそ気持ちなんて消えて欲しい。


ふと聞き手に回っていた仲井さんが、繋いだ手をそのまま、膝立ちになってぼくの頭を抱きしめてくる。

女の子特有のほんのり甘い匂いが鼻孔をくすぐった。心地よいぬくもりが伝わってくる。


「ごめんね。クダラナイ思いを、痛い思いをさせて」


小刻みに震えている彼女に気付き、ぼくは申し訳なさを込めて謝罪する。

クダラナイ気持ちを持ってしまったせいで、仲井さんは今、とても痛い思いをしているだろう。

じゅくじゅくと化膿した傷が疼いていることだろう。


本当にごめん、ごめんね。きみにこんな気持ちは味わわせたくなかった。

彼女がぼくに教えてくれたような、楽しくて、ワクワクするような気持ちを味わわせたかった。