「映画が好き、それにうそはないと思うけど……でも」

「いちばんじゃない。そう、言いたいんだろう?」


もうだめだ。誤魔化せない。


観念したぼくは力なく笑い、仲井さんよりも先に答えを出す。

彼女の言う通り、映画が好きな気持ちにうそはない。


ただ、その好きになった理由はしごくクダラナイものだ。


そして、いちばん好きだったものはギターだった。もう過去形だけど。


「今のきみは何を言っても痛くないよ中井くん。わたしがきみの気持ちを持っているから。良ければ話してくれないかな? ギターのことや、映画のことを」

「気分が悪くなるかもしれないよ。特にギターのことは……ぼくは思い出す度に吐き気を覚えていた。仲井さんが耐えられるかどうか」


「中井くんはわたしに気持ちをぶつけろって言ってくれた。じゃあ、わたしも言うよ。きみの思っている気持ちをぶつけてよ。わたしは今、誰よりも中井くんの気持ちが分かっているよ」


すごい殺し文句だ。

別の場面だったら、ぼくは勢いに任せて告白していたと思う。


ここまでしてくれるなんて、うぬぼれるじゃないか。


またしばらく沈黙が流れる。

背中に預けた鏡を横目で見ると、相変わらず情けない顔を作ったぼくがそこにはいた。

何もかも逃げ出したいような、そんな弱虫な顔だ。


けど、今は逃げることなんてできない。

仲井さんが手を繋いでくれているから。


何があっても放さないと言わないばかりに、つよく、つよく。