そうだよ、嫌いになったんだ。

ぼくは知らない、あんな楽器のことなんて。

弾いていた時の自分なんて。飽きたんだよ。モテたいから適当に弾いていたんだよ。


そう思っているから、べつに許すも許さないもない。


ふたりが責任を感じることもない。これ以上、ぼく達になにもない。これは終わった話にしか過ぎない。


「久しぶりに会って何を言いだすかと思えば、笑わせないでくれるかい?」

「英ちゃん、わたし達はあの時のことを話したいの。そして、また英ちゃんにギターを弾いて欲しいの。みんな、待っているよ」


「待っている? そういうのはいいよ。清々しているってことくらい、ぼくには分かっているし」

「ち、ちが。本当に待っているの。みんな、英ちゃんが戻って来てくれる日を……わたし達と話してくれる日を」


ぐらり、と仲井さんの体が前乗りに倒れそうになったのは、この直後だった。



「な、仲井さん?! 大丈夫!」



倒れそうになる体を受け止めるも、「き、気分が」と彼女がしゃがんでしまう。

血の気ない蒼白な顔色は、彼女の体調不良の深刻さを教えてくれる。

どう見ても歩けそうにないから、ぼくは彼女を背中に乗せることにした。


「ご、ごめんね……中井くん。ちょっと吐きそう」

「いいよ。どこかで休もう。旭。菜々。もう行くからな。ぼくはお前達と話すことなんてないから」