映画は朝の上映を選んだ。
その方が空いているし、自由席も選びやすい。
下心としては、午前中を映画で潰して、午後を少しでも長く過ごせるため、なーんてな。
仲井さんが観たい映画は今話題のヒーローもののハリウッド映画だった。
てっきり恋愛映画だと身構えていたけど、考えてみれば彼女はぼくの気持ちを持っている。
自分は恋愛映画を観たいかもしれないけど、ぼくの気持ちはそっちを好む。
だから必然的にぼく好みの映画を選んでしまったんだろう。
本人はホラー映画じゃなければ何でも良かったらしく、映画をとても楽しみだと言っていた。
「あ、中井くん。パンフレットが置いているよ。買った方が良いかな」
「ぼくは必ず買う派だよ。思い出にもなるし、映画の裏側とか俳優さんの記事には目を通したいんだ。
そして映画を観た帰りは、本屋に寄って映画雑誌を買う」
映画は本当に良い。
映像を通して、その世界に浸れる良さがある。なにもかも忘れられる、あの時間が堪らなく良い。
うんちくのように仲井さんに話していると、「本当に好きなんだね」と、彼女がおかしそうに笑った。
ぼくの映画に対する気持ちが彼女に伝わっているんだろう。
ぼくは大好きだと答えた。
万人受けする映画もコアな映画も全部好きだ。
恋愛映画もその内、好きになったりするのかな。
恋に落ちている今なら、ちょっとだけ興味があるかもしれない。本当にちょっとだけど。
映画を観終った後は、お手ごろ価格のハンバーガーで昼食を取った。
そこで各々映画の感想を言った。それが楽しい時間だった。続編が出るかもしれないね。その時はまた一緒に観よう。そんな口約束も交わした。
出る頃には、気持ちが元通りになっているかもしれないけれど、でも仲井さんとまた映画を観たい。例えこの関係が終わっていても。