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生まれてはじめて、好きな子とデートをする。


それはぼくにとって嬉しくもあり、緊張もする行事だった。

それまで好きな子ができたところで、ふたりで遊んだり、どこかへ行ったりすることはなかった。複数の友達と交えてカラオケやゲーセンに行くことはあったけど、それだけ。


正真正銘のデートは今日がはじめてだ。

だからこそ、目が覚めたぼくのテンションは最高に高かった。

いつもはギリギリまで寝ているのに、今日に限っては予定より一時間も早く起きた。朝食も多めに取ったし、服にも時間を掛けて悩んだ。


好きな子とふたりで遊ぶ、それがこんなにも心弾むなんてな。


自分でも思うけど、ぼくは本当に単純な人間だと思う。


そういう自分も嫌いじゃないけどさ。


時間が迫るとマンションを飛び出し、仲井さんと待ち合わせをしている場所へ。

そこはぼくと仲井さんに縁がある、三つ角公園前のバス停だった。


彼女にとってはお母さんとの思い出が強いだろうけど、ぼくは断然仲井さんとの思い出が強い。

あの日は雨だったけど、今日はカラッとした晴天。澄み渡った青空を見上げるだけで、心が踊りそうだった。


「中井くん。ごめんね、お待たせ」


待ち合わせ時間を五分ほど過ぎた頃、仲井さんが走ってバス停までやって来る。

オレンジ色の花柄模様が入ったワンピースが目を惹いた。

私服というだけでも新鮮だと思えるのに、女の子らしい服は余計に目が放せなくなる。

きっと、仲井さんのことだから、この日のためにオシャレをしようとがんばったんだろう。


そうだとしたら、ぼくはとても嬉しい。

彼女も今日を楽しみにしてくているんじゃないか、と淡い期待を抱いてしまうのだから。