“ねえ、お母さん。

どうして気づいてくれないの? 

どうしてそんなに嬉しそうに、わたしを叔父さんに預けようとするの?”



だけど矛盾して、絶対に気づかれないように気をつけていたのもわたしだった。


母が買ってくれたリンゴの形のお風呂セットを嬉しそうに胸に抱き、叔父の家に泊まりに行った。



“お母さん。

わたしは叔父さんから、恥ずかしいことをされています。

悪い秘密を持っています。


こんな子がお母さんの娘だなんて、きっとガッカリするよね?”
  





突如よみがえった記憶は、高校生のわたしを飲み込んだ。

全身の関節がさびついたように固まり、抗うことができなかった。


『――まだこんな所で寝てたんですか?』


リビングの扉が開き、母が入ってきた。


『コタツなんかで寝て、お正月から風邪ひいたら大変ですよ』

『ああ……うん』


白々しく寝ぼけた声で叔父が返事をする。

わたしは眠って聞こえないふりを必死でした。