「それで……ずっと黙ってきたん?」


どんな表情をすればいいのか迷うように、唇を引きつらせながら瑠衣はわたしを見つめた。


「うん。ずっと」

「そんな――」


言いかけて、瑠衣はとっさに口をつぐむ。

そして、吐き出すようにため息をついた。


「俺、めっちゃ辛いことを先生に言わせてるやんな」

「ううん。話すこと自体はそんなに辛くないから」

「よけい思い出したりせーへん?」

「思い出すけど……」


でも、と独り言のように言って、わたしは黙った。


しばらく考えてから、言葉を続けた。


「自分でもずっと忘れてたことやし」


「え?」


「叔父さんにされてたこと、ずっと、忘れてたから――」