……誰にも、言わなかった。

両親にも姉にも叔母さんにも。

自分の心の中だけに記憶を閉じ込め、笑っていた。


“わたしのせい”で家族が壊れてしまうこと。

それこそが、わたしの恐れたこと。

あのおぞましい行為よりも、ずっとずっと怖かった。



ごめんなさい。

嘘ついて隠して。

ごめんなさい。

隠さなきゃいけない秘密を抱えて。

ごめんなさい。



6歳の小さな胸に突然垂らされた黒いインクは、まわりからは絶対に見えない。



わたしさえ忘れれば、みんな今まで通り笑っていられる。



わたしが我慢しなければ、みんなの笑顔が終わってしまう。