どんな風にしてここまで来たんだろう。


走って、タクシーに乗り込んで、また走って。
だけどちゃんと思い出せない。

真っ赤にめくれあがったかかとの皮膚が、途方もない距離を物語っている。


空はもう暗かった。

薄手のニットが、風を通して寒かった。

それでもわたしは立ち上がることができず、いつまでもいつまでも、瑠衣と来た砂浜でうずくまっていた。


「なんで……っ」


ひざを抱き、嗚咽しながらわたしは叫んだ。


「なんであいつに会うの……!?」


波は悲しいくらいに穏やかで、わたしの泣き声をかき消してはくれなかった。




――『君ってさあ、本命の彼氏とか作る気ないん?』


春の夜に、山崎から言われた言葉がよみがえる。


――『なんか、君見てると深い理由でもあるように思えるわ』



やめて。



――『先生は、逃げてるみたいに見えます』

――『いつもひとりで何を抱えてるん?』



やめて。やめてよ。


わたしは……



――『正直、嫌やな。

セックスなしの関係』



わたし、は……