梅雨が明ければすぐに夏で、それもあっという間に過ぎた。

友達と遊んだりヒロトと会ったり、それなりに楽しく過ごしたはずなのに、
秋になるころには何の思い出も残っていなかった。


首筋をなでる風が肌寒い。


9月のある休日、わたしは秋物の洋服を買いに出かけた。



それがまさか、あんなことになるなんて、思いもせずに――。




普段はほとんど乗らないのに、この日に限ってどうして地下鉄を選んだんだろう。


子供のころはよく使っていた御堂筋線。

わたしの実家は、この地下鉄の沿線にある。


梅田までの切符を買うために料金表を見ると、必然的に、実家の最寄り駅の名前も目に入った。

たいして気に留めず梅田までの切符を買った。