胸がつぶれそうだった。

あまりにまっすぐで、あまりにも熱すぎて。


「わたしが片瀬くんのこと避けてるの、わかってたやろ?」

「うん」

「さっきだって、わざと他の男とこの道歩いたのに」

「うん」

「じゃあ、なんで……っ」


瑠衣は立ち上がり、ぎこちなく笑ってみせた。


「なんでやろうな。俺、アホやなあ」

「……」



今、わたしが手を伸ばせば、触れられる距離に瑠衣はいる。


彼らしくない作り笑いの頬を、撫でてあげることができる。


震えの止まらないわたしの体を、抱きしめてもらうこともできるんだ。



「片瀬くん……」