ドクドクドク……と心臓が急速に打ち始める。

手のひらが汗ばんでいるのがわかる。


瑠衣は、外から見える席に座っているだろうか?


――いた。


窓際の席にひとりで座っている瑠衣と、ガラス越しに、はっきり目が合った。


「センセイ……」


声が聞こえたわけじゃない。

けれど放心した瑠衣の唇が、その形に確かに動いた。


ヒロトに肩を抱かれたまま、わたしは瑠衣の前を通り過ぎる。


ほんの数秒の出来事。

だけど果てしなく長い、数秒間。



ねえ、瑠衣。
これでわかったでしょう?


わたしはこういう女なんだ。

そしてこれが、答え。



だから……もうこれ以上わたしの心に入ってこないで。