待ち合わせ場所でその人はわたしを見つけると、吸っていたタバコを地面に落とし靴の裏で消した。


「お待たせ」


わたしはその人の前で足を止め、笑顔を見せる。


「急に呼び出してごめんね。……ヒロト」

「いや、葵から誘ってもらえるとは思ってなかったから、嬉しいで」


ヒロトの腕がわたしの肩にまわった。


「どうする? タクシーで移動する?」


どこに行く? とは訊かないヒロト。

そんな質問は不要なのだ。


低い声でわたしは答えた。


「ううん……電車がいい。駅まで歩こ」


――駅の近くにはスターバックスがある。


残酷なことをしていると、自覚はあった。

だけどこうでもしなきゃ、あの子を遠ざける自信がなかった。


「オッケー。行こうか」


ヒロトはわたしの肩を押して、駅の方へと歩きだした。


しばらくすると、徐々に緑色の看板が近づいてきた。