どうして、そっとしておいてくれないんだろう。


背の高い後ろ姿をやりきれない気持ちで見つめながら思う。


気持ちが止まらなくなる前に、わたしはブレーキをかけたのに。


瑠衣はそんなわたしを、放っておいてはくれないんだ……。



その日の授業は上の空で、どうにかこなしたという感じだった。


職員室で帰り支度を整えながら、わたしは窓の外を見た。

星のないグレーの夜空が広がっている。

ため息が出た。


わたしは携帯を握り締めた。

ある番号を表示させ、発信のボタンを押す。


2コールもしないうちに電話はつながり、


『もしもし?』


男の声が響いた。