服も脱がずに抱き合っていると、ヒロトの手がわたしの頭をなでた。

わたしはその手をつかんで、どかせた。


「ん? どうしたん?」

「……髪は、撫でないで」


そうお願いするとヒロトはあっさり手を引っこめて、代わりに服の中に忍び込ませた。



――ほんのささいなことであの子を連想してしまう自分を、早く消したい。


求めないと誓った恋や愛を、求めてしまいそうになる自分を、消してしまいたかった。





あれ以来、なるべく瑠衣と距離を置くことにしている。

彼はわたしの授業を受けにくるけれど、わたしはその間も彼の席の方を見ないように心がけた。


視界に入れない、というのはなかなか難しいものだ。

こうしてみると今まで自分がいかに瑠衣を見ていたか、つくづく自覚する。


授業が終わるとすぐに教室を出るようにした。

いくら瑠衣と距離を置こうと思っていても、事情を知らない栗島くんや涼子ちゃんに話しかけられることもある。

それすらも避けなければいけなかった。



こうまでして必死にブレーキをかけていたのに、瑠衣はあっさりと、わたしのところにやってきた。