- PLATONIC -
エピローグ
青い空がまぶしい。
入道雲のふちが、きらきらと輝いている。
わたしは公園の木陰のベンチに座り、葉の間から差し込む太陽に肩を焼かれていた。
視線の先の砂場には、スコップを片手に遊ぶ女の子。
服が汚れるのも気にせず、砂のお城作りに熱中する姿は、思わず顔がほころぶほど愛らしい。
「できた! 見てみて」
そう言ってスコップを置くと、無邪気な瞳を輝かせ立ち上がる。
そして、両手を広げ小さな体で走り寄ってきて――…
「ママっ」
わたしの隣に座る、涼子ちゃんに抱きついた。
「……突然会いにきてすみません、先生」
女の子をひざに乗せて、涼子ちゃんが言う。
「ううん。元気そうでよかったよ。……6年ぶりやっけ?」
「はい」
「その子は?」
わたしは視線を落としてたずねた。
大人たちの会話なんか耳に入らない様子で、母親の胸に甘える女の子。
涼しげな目元が涼子ちゃんによく似ている。
小さな頭を撫でてやりながら、涼子ちゃんは答えた。
「エミリっていうんです。父親は、先生が知らない人です」
やわらかい笑顔。
わたしの知らない年月を思わせる、大人びた表情だった。