あなたを忘れるために流した涙の量。

あなたが夢に出てくるから眠れなかった夜。


胸を切り裂くような慟哭の日々を経て、やっとたどり着いた今があったのに


「――…瑠衣」


ガードレールに座るあなたを見た瞬間、心は簡単に、3年前に戻ってしまった。



瑠衣は、待っていてくれた。

時間はとっくにすぎているのに。


「どうして……?」


髪が伸びて、少し大人びた表情の瑠衣。

だけど笑顔は、悲しいくらいあの頃のままで――


「葵のこと待ってるって、言ったから」


返ってきた言葉すら、あの頃と同じだった。


 
瑠衣は立ち上がり、一歩ずつ、わたしに近づいてくる。


そばに来ると少し背が伸びた気がした。

たぶん、気のせいじゃない。

わたしははっきりと瑠衣の身長を覚えていた。

だってこの3年間、いつもあの目線の高さを探していたのだから……。


「久しぶり、葵」


その言葉だけで胸が張り裂けそうになった。


わたしのすぐ目の前に瑠衣が立っている。

瑠衣の匂い。

全然、変わっていない。


会いたかった。

この3年間ずっと会いたかった。


「俺、実はな」


すっと背筋を伸ばして言った。


「明日からアメリカに行くねん」

「え?」

「留学。しばらくは向こうで暮らすと思う」


そっか……手紙に書いていた、日本を離れるってそういう意味だったんだ。


それで、会いにきてくれたんだね。