――…6月、


雨の日に憧れのジューン.ブライドになったミキ姉は、そこにいる誰よりも美しく輝いていた。



「次は葵ちゃんの番やね」


集まった親戚が口々に言った。


「早く葵ちゃんも子供を産んで、一人前になりなさいね」






実家に泊まっていけというお父さんの誘いを断り、披露宴が終わるとすぐにマンションに帰った。


堅苦しいフォーマルなワンピースを脱ぎ捨て、わたしは大きな鏡の前に立った。

裸の自分を、そこに映した。


……ふくらんだ胸。

鏡の中の自分に、そっと触れてみる。


なだらかな曲線を描く腰。

丸みのあるお尻や、太もも。

25歳の女として、何の過不足もない、わたしの体。
 


けれどこの体が愛する人を受け入れることは二度とない。
 

ミキ姉のような喜びは、わたしには手に入らない。


新しい命を生み出すことは、きっと、一生ない。