卓巳との電話を切ったと同時に、愛しい人からメールが届いた。
 

着信音はWhamの“ラスト・クリスマス”。

春が近づく今の時期に、季節外れは百も承知だけれど。


いつか、彼がこの曲を好きだと言っていたから。

わたしも好きになったんだ。



【無事に大学合格しました】
 

そう……今日は、瑠衣の合格発表の日。


絵文字すらないそっけないメールが、彼の興奮を表していた。


【おめでとう。瑠衣なら絶対に受かるって信じてたよ】
 

本心からそうメールを返した。

1分も経たないうちに返信がきた。


【旅行とか、行かへん?】
 

いきなり何を言い出すんだろう。


【いいね。どこにする?】

【どこでもええよ。でも、なるべく近場の方がええかな】

【近場?】


【葵との思い出の場所は、何回でも訪れたいから】




――わたしたちは、思い出を作るのが大好きだった。


教室も、海も、スターバックスも。

ふたりにとってはすべてが思い出の場所で、燦然と輝いていた。


……もしかしたらそれは、いつも何かを失いながら恋をしていたせいかもしれないね。
 

決して満たされることのなかった、渇愛の日々の中で。

失くしては求め、手に入れては、また失くして。
 


その繰り返しがいつまでも続くわけがないと、わたしはまだ気づいていなかった。