「受験、お疲れさま~!」
 

ハイテンションの音頭を合図に、グラスがぶつかった。
 

入試が終わったお祝いをしよう、という栗島くんの提案で、今日は“お疲れパーティ”だ。

と言ってもファミレスでソフトドリンクだし、何より合格発表がまだだけど。


「まあまあ、細かいことはええねん」
 

相変わらずのノーテンキな様子で、栗島くんはメニューをチェックする。
 

久しぶりの男子メンバーも揃い、場はにぎやかだった。


「それにしても、まさかふたりが付き合ってたとはなあ」
 

みんなの視線はわたしと瑠衣に集中している。
 

今となっては、この恋を彼らに隠し通す必要はない。

正直に打ち明けると、みんな驚きつつも祝福してくれた。


「年上の彼女ってうらやましーっ!」
 

ひやかし半分の声で彼らは言った。


“うらやましい”に、性的な意味も含まれていることは明らかだった。

若い彼らの、最大の関心事。

胃がムカムカした。


「お前らなあ、いやらしい言い方すんなよ」
 

フォローを入れてくれたのは栗島くん。

わたしの内心なんかもちろん知らずにだろうけど、救世主に見えてしまう。


「瑠衣、先生を大事にしろよ?」

「おう。当然」
 

栗島くんの応援に笑顔で応える瑠衣は、今どんな気持ちなんだろう。
 


あの日――瑠衣とのセックスを拒んだ日から、

毎日のように会っているのに一度も抱かれていない。


正確には、わたしが遠まわしに拒み続けている。


一緒に眠るときなんか瑠衣のわずかな寝返りにさえも神経を働かせてしまうほどだ。

彼が寝息を立て始めるまで、わたしは安心して寝入ることができないようになっていた。


わたしの中で確実に起き始めた変化。

もちろん、ふたりとも痛いほどに感じている。


だけどけっして突き止めようとはしなかった。


はっきりと絶望するのが、お互い怖かった。