寄り添う肌が、ぴったりとなじむ。

かけられる体重は、わたしが苦しくならない程度をよく知っている。

お腹に力が入る。

息づかいが聞こえる。


そこまでは、いつもと同じだったのに。
 

前触れはなかった。

急にこみ上げた恐怖が、胃を押し上げた。


「いやっ……!」
 

悲鳴のような声が出て、そのことに自分が驚いた。
 

ハッと目を開けると、瑠衣の体はわたしから離れてベッドの端にあった。

わたしの両手が彼を押しのけたのだと理解するまで、時間がかかった。


「あ…あの……」
 

ごめん、と言おうとして、ちゃんと発音できないことにまた驚く。

心臓が壊れたように暴れて、唇を動かすことすらままならなかった。


代わりに瑠衣が口を開いた。


「葵。どうしたん?」

「……」

「まさか――」
 

言いかけて瑠衣は首を振る。

芽生えかけた疑念を、消し去るように。


“まさか――”。


言葉の続きは、わたしが一番よく知っている。
 


最も恐れていたことの

幕開け。





時間と共に愛が深まるのは喜ぶべきことなのに。


わたしの中の欠陥部分が、愛しすぎることを許さない。


瑠衣となら乗り越えられると思ったのは錯覚だった?

ううん、そうじゃなくて。


きっと忘れていただけ。


好きになればなるほど、心と体の距離が開いていく、

自分の悲しい運命を――。