半年ぶりに見る、彼の笑顔。

変わっていなくてホッとした。
 

あの頃――栗島くんは、瑠衣とわたしの仲を心配してくれていたのに、わたしは黙っていなくなったんだ。


きっと、ガッカリさせてしまったと思う。


だけど今、こうして以前と変わらない態度で接してくれる栗島くん。

やっぱりいい子だなあ、とつくづく感じた。


「ライブ、すごいよかったよ。うまくなっててビックリした」

「ホンマですか? 嬉しいなあ」


栗島くんは見ているこっちが清々しくなるほど、喜びをあらわにする。


「俺も今日ばかりはお前を尊敬したぞ」

と瑠衣が言った。


「うわっ。瑠衣が俺のこと褒められるとか、ありえへん。
何かたくらんでるんちゃうやろな?」

「俺だって褒めるときは褒めるっちゅーねん」


結局、いつものようにじゃれ合いを始める彼ら。

その様子は数ヶ月前までの予備校の風景を、わたしに思い出させた。


だけどあの頃とは決定的に違うものがあった。


放っておけばいつまでも遊んでしまう彼らを、母親のようにまとめる役割を担っていた女の子。


……彼女の姿だけが、ここにはない。



「おー、栗島ぁ」


突然、男の人が声をかけてきた。


「あっ! ショータさん。お疲れ様です」


栗島くんはその人を見て、ぴしっと姿勢を正した。
 

ショータさんと呼ばれた男の人は、たぶんわたしと同い歳くらい。

服の上からもガッチリとした体格が見てとれる、少しいかつめの風貌。