「そうかなあ。あんまり女っぽくないと思うけど」

「いや、水野のイメージからすればかなり女っぽい」

「どういう意味よ」


しょうもないやり取りをするわたしたちは、あまり男女ということを意識せずに付き合える仲だ。


恋人同士だった頃はあんなにしんどかったのに

大人になってまたこんな風に付き合えるなんて、思っていなかった。


「今日は莉奈ちゃんは?」

「実家に預けてきた。親父がさ、莉奈を連れてこいって毎日うるさいねん」

「やっぱ孫は可愛いんやろねー」


うちの両親だって、今は幹太くんにベッタリだ。

もうすぐ東京のおうちに戻るのに、そうなったらさぞかし寂しがるだろう。


「そういえば水野、予備校はどう?」


卓巳がアイスコーヒーの氷を噛みながら言った。


「うん。おかげさまで順調やで。
もうすぐ夏期講習が始まるから今はその準備ってかんじかなあ」

「そっか、よかった」


卓巳は仕事の面でも良い相談相手になってくれる。

高校と予備校の違いはあるけれど、同じ“センセイ”と呼ばれる者同士、わかりあえる部分も多い。


「あ、実家からもらったお菓子があるけど、食べる?」

「おう。サンキュー」


わたしは台所に行き、棚からクッキーの缶を取り出した。


お皿に並べたものを持ってリビングに戻ると、卓巳はソファから立ち上がってテレビの前にいた。


「あ――」


少し前かがみになった卓巳の視線の先には、コルク素材の写真立てがあった。


飾っているのは、瑠衣とのツーショット。