すぅっと胸が楽になった。


わたしが瑠衣を好きになったのは、間違いじゃなかった。

ずっと誰かにそう言ってもらいたくて。


「……ありがとう」

「何言ってんの。これでもわたしは葵のお姉ちゃんなんやから。
何か相談があればいつでも乗るよ」


ミキ姉の笑顔は陽だまりみたい。


胸に詰め込まれていた不安が、少しずつ消えていく。



 

ミキ姉と別れてから、わたしは携帯の電話帳を開いた。


この数ヶ月でむだに増えすぎたアドレスを、上から順番に消去していった。



だけど、電話帳に残しておきたい人も、ちゃんといる。


「……もしもし、卓巳?」

『おう。どうした?』


「あのね、こないだ言ってた予備校の話やけど……

わたしでよければ、受けてみようと思う――…」





 
 瑠衣。



あなたのいない毎日はちょっと味気ないけれど、

あなたを感じなかった日なんて、一日たりともなかった。



背の高い人を見れば思い出し、

似た仕草を誰かがすればバカみたいに胸がときめいた。



きっと瑠衣の欠片を見つけるのが、わたしは得意なんだね。



でももう大丈夫。

いっぱい、いっぱい、あなたは思い出を残してくれたから。



それを抱いて

もう一度立ち上がってみるよ。