真っ黒に日焼けした顔で寄り添っているのは、たぶん高校2年の夏休み。

同級生たちと一緒に海に行ったときだ。


泳げないわたしを浮き輪につかまらせ、卓巳が沖の方まで連れて行ってくれたっけ。


「懐かしいね」


わたしはページをめくりながらつぶやいた。


「卓巳、いつもみんなに囲まれてたよね」


写真に写る彼の周りは、どれも笑顔の友人であふれている。


卓巳は女の子からすごくモテたのに、ちっとも嫌味じゃない性格のおかげで同性からも好かれていた。


いつも明るかった17歳の卓巳。

まっすぐで、純粋で、太陽の下が似合う人だった。


……そう、まるで、彼のように。



「大丈夫か?」


心配そうな顔で見られてしまった。


「あ、うん」


作り笑いの裏で、わたしはため息をかみ殺す。


また、だ。

また彼のことを思い出してしまった。


いったいいつまで引きずるつもりだろう。

早く忘れてしまいたいのに。


「水野ってたまに寂しそうな顔するよな」

「そう、かな」

「原因はやっぱり、男?」


何も言うことができなかった。

無反応は、りっぱに肯定の証。

卓巳は言葉を続ける。


「こないだホテル街で腕つかんだ時さ、お前いきなり泣き出したやん? 
あれって実は俺じゃなく、他の男の影を見てたよな?」

「………」

「好きな奴か?」


小さくうなずいた。


好きだったよ。

腕をつかまれただけで彼かと勘違いしてしまうほど。

今も何かあるたび思い出しては、自己嫌悪におちいってしまうほど。


「でも……もう別れたから」