「いただきます」


ちょっと遠慮がちに箸を運ぶ。

初めて食べる卓巳の手作り料理。


「美味しい」


お世辞抜きでそうつぶやいた。


「やろ?」


莉奈ちゃんにスプーンで離乳食を食べさせながら、卓巳が笑う。


「いっぱい食えよ」


彼の言葉通り、ついついたくさん食べてしまった。

ひとりでご飯を食べるときは、食欲なんかほとんど湧かないのに。


失っていた味覚を取り戻したように、わたしはその日の夕食を楽しんだ。






食べ終わると、莉奈ちゃんは満足したようにすやすやと眠り始めた。


卓巳は莉奈ちゃんをベビーベッドに寝かせて、本棚から分厚いアルバムを取り出した。


「何それ?」

「青春の思い出」


わざとカッコつけた口調で卓巳が言う。


開いてみるとそこには高校時代の写真がいっぱいあった。


体育祭や修学旅行のひとコマ、

通いなれた通学路で変なポーズを決めている写真もある。


「うわーっ。卓巳、若い!」

「水野もな」